はるか遠くへと続く海を眺めつつ、
食やアクティビティを楽しみ贅沢に過ごす昼

「飛鳥Ⅱ」は旅行代金を支払えば、一部のレストランを除いて船内の好きな店で好きなだけ食事ができるのが魅力だ。乗客が立ち入れる4〜12Fのうち、11Fにある「リドカフェ&リドガーデン」では、朝も昼もビュッフェが食べられる。そして隣接する「リドグリル」では、13:30からグリルで焼いたつくりたての昼食を提供している。せっかくなので、リドカフェ&リドガーデンの海の見える席でスープとサラダ、フルーツを軽く食べてから、リドグリルで食事をとることにした。乗船前から、ここで焼きたてのハンバーガーを食べるのを楽しみにしていたのだ。
リドグリルへ向かうと、カウンターには「黒豚バーガー、ホットドッグ、海老ピラフ」と3種類のメニューが書かれたプレートが置かれていた。ホットドッグも捨てがたいが、ここは心待ちにしていた黒豚バーガー一択だ。ビーフ、ポーク、シーフード、ドライカレーと、日替わりでいろいろな種類のハンバーガーを提供しているそうだ。明日は別の種類を試してみよう。

番号札を受け取って席で待っていると、ハンバーガーが運ばれてきた。まずバンズの部分を一口かじった。バンズも船内で焼いているらしく、ほどよい柔らかさで美味しい。次に黒豚のパティをレタスとトマトごとかじる。肉の旨味がぎゅっと詰まっていて、意外と脂っこい感じがしない。むしろあっさりとしているので、ぺろっと食べられてしまった。添えられている太めのポテトも、じゃがいもの味がしっかりとしていい。日頃は健康を気にしてハンバーガーを食べることなんて滅多にないのだが、グリルでつくった焼きたてだと思うと不思議と罪悪感がない。満足のいく昼食だった。
そしてリドグリルでもう1つ楽しみにしていたのが、ジェラートだ。ここには、ショーケースに何種類ものジェラートが並んでいて、好きな味を注文できる。この日は、山北みかんシャーベットと焦がしりんご、天日塩、本山抹茶、白いちご、バニラの6種類があり、私は天日塩を選んだ。
ジェラートは、ほんのりと塩味がする。さっぱりとしていて、ハンバーガーの後にぴったりだ。ジェラートを味わっていると、1人の男性が「相席いいですか?」と尋ねてきた。「どうぞ」と返して座った男性は70代くらいだろうか。聞くと、息子さんと2人で乗船していて、飛鳥には450泊もしていると言う。国内だけでなく、世界を周るクルーズも何度か体験しているとのこと。船内や寄港地での思い出はアルバムに残しているそうで、写真を見せてくれた。老後にこんなふうに何度も船旅を楽しんでいるなんて、素敵だ。私も時間とお金が許す限り、長期の船旅に何度か出てみたいと思った。しばらくお互いの旅について話をした後、挨拶をしてお別れをした。

飛鳥IIには長期のクルーズでも船内で楽しめるように、様々なアクティビティや施設がある。ゴルフの打ちっ放しができるゴルフレンジや、ウォーキング・ジョギングができるデッキ、トレーニングマシンがあるフィットネスセンター、それに屋外プールまで。
体を動かすのもいいが、今日の午後は11Fのリドグリルの奥にある「シーホースプール」でとことんゆっくりと過ごすことにした。中央にプールがあり、両サイドにデッキチェアとパラソルがある。プールでは男性が1人で泳いでいた。こんな暑い日に太陽の下で泳ぐのは、気持ち良さそうだ。私はどうも水着を着る勇気が持てなかったので、このリゾートらしい雰囲気を楽しむことにした。チェアに座って持ってきた本を読んでいると、食後だからかほどなくしてゆるやかな眠気がやってきた。寄港地に寄らない日は、こんなふうにまどろみながら昼を過ごすのもいい。

外が暑くなってきたのと少し喉が渇いたので、涼みに屋内へ戻ることにした。飛鳥IIにはいくつかカフェスペースがあるが、船首側の「ビスタラウンジ」が気になっていたので、そちらへ行くことにした。ビスタラウンジに入ってすぐ右側がカウンターで、その先には半円形の空間が広がっており、青いカーペットに真っ白なイスが並んでいて爽やかな雰囲気だ。壁面は一面ガラス張りで、前方には海が見える。
窓際の席に座ると、スタッフがすぐにオーダーを取りに来てくれた。テーブルのメニューを見ると、温かい飲み物も冷たい飲み物も一通りそろっている。暑いので、アイスコーヒーを頼んだ。ビスタラウンジの手前にある「パームコート」というカフェの一角には、デザートが並んでいる。こちらでも自由に食べられるようなので、飲み物を待っている間に取りに行くことにした。ちょっとしたビュッフェのようになっていて、ミニケーキ3種とクッキー3種を取って席に戻った。

ベリーと抹茶のムースケーキも、ヘーゼルナッツのパウンドケーキもほどよい大きさと甘さで美味しい。チョコとナッツ、ヘーゼルナッツ、ゴマのクッキーもサクサクで軽さがあるので、何枚でも食べられてしまう。運ばれてきたアイスコーヒーもキリリと冷えていて、酸味も苦味もちょうどいい。このまま1時間ほど、ゆっくりと過ごすことにした。

夕食へ行く前に、お風呂に入ろうと思い立った。客室内の湯船もそれなりに広さがあってゆっくりとできそうだったが、せっかくなので12Fの展望大浴場「グランドスパ」へ行くことに。今日は6:00〜12:00と13:00〜25:00で開いているようで、早朝や深夜も入浴できる。浴室内に入ると、大きな湯船が3つ並んでいた。両端がジェットバスで、中央が通常の湯船に見える。窓はここも一面ガラス張りで、海が見えた。まずジェットバスに入ると温度はちょうど良く、水流が体に当たって心地いい。海を眺めながら夕方から入るお風呂は爽快だ。まだ空は明るいが、一部が紫色に変化していて夜の準備に入りつつあった。次に中央の湯船に入ると、こちらは少し温度が高めであることがわかる。ふと水面を見ると、船の揺れに合わせてお湯がゆらゆらとゆるやかに揺れている。船上のお風呂ならではだと思いながらしばらく熱めのお湯を楽しんだ後、サウナへ向かった。
グランドスパには、ドライサウナとスチームサウナ、水風呂がある。サウナはあまり得意なほうではないので、温度の低いスチームサウナに入った。5分もするとじわじわと汗をかき始め、10分経った頃に部屋を後にした。最後にぬるめのシャワーで汗を流す。体が芯から温まった感覚がした。明日は、朝から入りに来よう。時間帯によって、また違った海と空の表情が見られるに違いない。

まだ夕食まで時間があったので、少しショッピングエリアを覗いてみることにした。飛鳥IIにはお菓子や雑貨から衣類、宝飾品までそれぞれの商品がそろった店舗がいくつかある。家族や友人にちょっとしたお土産を買いたかったので、お菓子や雑貨が置いてある「ル・ブルー」へ行くことに。
店内には、限定のクッキーやチョコレート、テディベアに生活用品が少しと、オリジナルラベルの焼酎などのお酒もあった。お酒も気になったが、気軽に買える缶や箱に入ったクッキーを計2つ購入。お土産を買うと、なぜだか少し安心する。あとはまた、気兼ねなく楽しもう。そう思って店を出た。