いつか時間ができたら、
クルーズ客船に乗って世界各地や国内をただ自由気ままに旅したい
天候や時間帯によって表情を変える船内ではゆったりとした時間を堪能して、
停泊した見知らぬ土地では現地を思い切り楽しむ、
そんな旅を。
これは陸から離れ、
どこまでも続く海と空の間で、
移動時間すらも贅沢に過ごしたい全ての人に向けた、
日本一の豪華クルーズ客船
「飛鳥Ⅱ」の乗船記。

洋上の豪華客船で時を忘れ
食とエンターテイメントを堪能する、きらびやかな夜

【午後18:15】ギャラクシーラウンジでショー鑑賞

飛鳥Ⅱでは様々なエンターテイメントを提供しており、6Fには「ギャラクシーラウンジ」というステージショーやコンサート用のスペースがある。その日に開催されるショーの内容や時間は、朝客室に配布される船内新聞の「アスカデイリー」に書いてあり、この日は飛鳥IIオリジナル演目の「シネマ」というショーが上演される。まだ夕食までしばらく時間があり、18:15〜19:05の回がちょうど良かったので見ることにした。

場内は想像していたよりも広く、観客が300人以上はいるだろうか。この演目では、往年の名作映画のメドレーを歌とダンスで披露するようだ。キャストはみんな、海外のミュージカルやショーで経験を積んできたそう。ショーが始まると、映画のテーマに合わせてキャストの衣装やステージの雰囲気が変わっていく。『レ・ミゼラブル』や『ティファニーで朝食を』、『シェルブールの雨傘』、『NINE』などいくつか知っている映画もあった。どんな人が見ても必ず知っている映画があるだろうし、テンポ良く場面が変わっていくので最後まで飽きずに楽しんで見られた。演目は毎日変わり、アーティストを呼んでコンサートを開くこともあるとか。

【午後19:00】シアターへ

ギャラクシーラウンジと同じフロアには、「ハリウッドシアター」という映画館もある。どんなところなのか、少し見に行ってみることに。外のプレートを見ると、今はちょうど海外作品が上映中なので、中に入るのは遠慮しておいた。上映内容や時間帯はアスカデイリーに書いてあり、午前と午後で上映作品が変わるようで、レイトショーもある。ガイドブックを見ると、ギャラクシーラウンジよりは小さいが、それでも広さはありそう。映画好きな私としては、シアターがあるのはとてもうれしい。また次に飛鳥に乗るときに利用しよう。夕食までまだもう少し時間があったので、5Fのアスカプラザのラウンジで時間まで待つことにした。

【午後19:45】フォーシーズン・ダイニングルームでディナー

飛鳥IIでは、夕食を提供しているレストランが4ヶ所ある。「フォーシーズン・ダイニングルーム」と、Sロイヤルスイート、Aアスカスイートの宿泊客だけが利用できる「プレミアムダイニング・ プレゴ」、有料で利用できる寿司と和食の店「海彦」。そしてハンバーガーなどの軽食を提供する「リドグリル」だ。私は泊まっている客室で利用できる、フォーシーズン・ダイニングルームへ。夕食は2回制で、1回目は17:30頃からで、2回目は19:45頃からはじまる。どちらになるかは決められていて、私は2回目だ。時間になって中へ入ると、レストランのスタッフが一列に並んであいさつをして出迎えてくれた。店内は、思っていたよりもだいぶ広い。ここでは日によってフレンチと和食を提供していて、今日はフレンチだ。

メニューを見ると、前菜とスープ、メイン、デザートは3種類以上から選べる。私はすべて、シェフのオススメメニューを選んだ。1品目の前菜は、「マグロのカルパッチョとアボカドのソース」。透明な円形のお皿の上にマグロが4切れと、角切りのキュウリやトマトが散らしてあり、中央にアボカドのソースが敷かれている。魚をアボカドにつけて食べる、というのが新鮮だけれど、食べてみるとよく合う。見た目も味も涼やかで、夏の前菜にぴったりの一品だった。

2品目の「紫玉葱とベーコンのブイヨンスープ」も、野菜と玉葱の旨味が出ていて美味しい。3品目は、「カダイフで巻いたイサキのフリット リゾットと共に」。細い乾燥麺がイサキを覆っていて、その下にリゾットが敷いてある。カダイフとは、この麺のことを言うらしい。フォークを入れると、パリパリといい音がする。麺とイサキ、リゾットを一度にすくって口に運ぶと、どれも食感が違って不思議な感触がした。一方で味はシンプルでさっぱりしているので、口の中で上手く調和している。メインの前の3品目にちょうど良かった。

メインは、「仔牛フィレ肉のグラティネ ローズマリーの香りとリ・ド・ボーのブレゼ」。グラティネはフランス語で焼き目をつけることを言い、リ・ド・ボーは子牛の胸腺、ブレゼは煮てから蒸す調理法のことだとか。肉の上にはオランデーズソースがかかっていて、横にはさつまいもといんげん、青唐辛子などの野菜が添えられていた。肉は分厚いけれど、仔牛なのでやはり脂身が少なくとても柔らかい。たっぷりとかかったキレイな黄色のソースとも、旨味がよくマッチしている。肉を食べ終えた後も、給仕されたパンをソースにつけて最後まで美味しくいただいた。添え物の野菜は甘みがあって美味しく、いい箸休めになった。

そして最後は、「ピーチコンポート レモンシャーベット」のデザート。桃は白ワインとバニラビーンズ、ブラックペッパーで煮込んであり、その煮汁にラズベリーを足してつくられたジュレが桃の下に敷いてある。桃の上にはレモンシャーベットが乗っており、その上からベルガモットのオリーブオイルがかかっていて、華やかでオシャレな一品だ。桃は甘く、ワインの風味が染み込んでいる。シャーベットはレモンが香ってさわやかな味だ。雪のようなシャーベットと柔らかな桃、ふるふるとしたジュレのそれぞれの食感の違いも楽しめた。テーブルごとに担当のスタッフがついていて、声をかけるとすぐに来てくれる点も含めて満足のいく食事体験だったと思いながら、食後は紅茶を飲んでゆっくりとした。

【午後21:15】モンテカルロでカジノ

6Fには、カジノもある。法律上、ゲームで使うチップやコインを金品と交換することはできないが、18歳以上ならルーレットやスロット、ブラックジャックが楽しめる。私が行った時にはすでに、室内は10名以上の人で賑わっていた。カジノは初めてだったが、意外と女性客が多くて安心した。ルーレットテーブルの前にディーラーがいたので、近寄ってみた。ディーラーによると、まず最初にチップを購入し、それを「レイアウト」と言うテーブルのグリーン地の数字に賭けていくそうだ。ルーレットの奇数や偶数、赤・黒、1〜18、19〜36に賭けると当たる確率は高くなるが、当たってもチップの倍率は2倍で、賭ける数字の数を絞るほど倍率が上がっていく、という仕組みらしい。

「ディーラーがルーレットを回すスピードには癖があるはずなので、ゲームを重ねたら過去の当たった数字の履歴を見て賭けると当たりやすい」とのことで、なるほどと思った。何度か遊んでみると、偶然にしても当たった時は高揚感がある。これで本当にお金が倍以上になって戻ってきたら……なんてことを、つい考えてしまった。ディーラーは、もう13年も飛鳥でこの仕事をしているとのこと。はじめは少し不安だったが、初心者の私にも丁寧にルールを説明してくれた。聞くと、ここへ来るのは女性のほうが多いようだ。ふだんならしないような、初めての体験ができて楽しかった。

【午後22:00】マリナーズクラブへ

客室に戻る前に、少しお酒を飲んでゆっくりすることにした。モンテカルロを出てハリウッドシアターを抜け、同じフロアの「マリナーズクラブ」へ。右手には木製のカウンターがあり、左手にはテーブルとイスが並んでいる。英国風の書斎のような、落ちついた大人の雰囲気だ。カウンターのほうに座り、メニューを見た。アルコール入りのカクテルからノンアルコールまで、種類が豊富にそろっている。甘酸っぱいものが飲みたい気分だったので、飛鳥焼酎とサクラリキュール、クランベリージュース、グレナディンシロップが入った 「アルバトロス」というカクテルを選んだ。飛鳥焼酎は、飛鳥IIのオリジナルラベルの焼酎「晴耕雨読」のことで、船内の「ルブルー」というお土産ショップでも買えるとバーテンダーが教えてくれた。

運ばれてきたカクテルは、ほんのりオレンジ色でキレイだ。グラス全体には砂糖がまぶしてあって、それがまた模様のようで美しい。味も期待通りの甘酸っぱさで最後まで美味しくいただけた。自分が今、海の上のバーでゆっくりとカクテルをたしなんでいるなんて、少し信じられない気持ちだ。明日はいよいよ、入港の日。最後に素敵な夜を過ごせた。

【午前9:00】入港

入港の日、フォーシーズン・ダイニングルームで和食の朝食を済ませ、少しゆっくりした後に最上階の12Fに向かった。すでに船首付近には、港へ近づいていく様子を見ようと多くの人が集まっていた。前方には大きな橋が見える。その下を船がくぐると、徐々に周囲の景色が変わっていき、港のコンテナや建物に囲まれはじめた。前方には、港町のランドマークが見える。キレイな景色だが、この夢のような船の旅が終わってしまうと思うと、少し寂しくもあった。何より、一面大海原のあの光景がすでに恋しかった。

客室に戻り、 下船まで少しバルコニーから外の景色を眺めていた。次にこの船に乗れるのは、いつだろうか。今度はもっと長期間のクルーズに参加して、行ったことのない土地に立ち寄ってみたい。そんなことを考えながら、船を後にした。

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